『逆算思考』が示す「とりあえず行動」から抜け出すための考え方

リクルート・グループの様々な事業で成果を残した著者のもとには、 数多くの依頼が舞い込みます。内容は様々で、必ずしも得意だったり、 経験のあるテーマばかりではありません。 それでも課題を解決し、依頼者の要望に応えられるのは、 著者の考え方に秘密があります。
目次

行動しているのに選択肢が増えない理由

仕事やキャリアにおいて、「何もしないよりは動いた方がいい」という考え方は広く共有されている。しかし現実には、行動量を増やしているにもかかわらず、選択肢も成果も広がらない状態に陥るケースが少なくない。この状態は、意欲や努力の不足ではなく、思考の出発点が誤っていることによって生じる。

逆算思考では、この問題を「スタートから考えている限り、行動は最適化されない」という構造で説明している。行動そのものが問題なのではない。どこへ向かうための行動なのかが定義されていないことが問題なのである。

スタートドリブン思考が生む「行動の袋小路」

スタートドリブンとは何か

本書では、一般的に行われがちな思考法を「スタートドリブン」と呼んでいる。スタートドリブンとは、

  • 今の立場
  • 今のスキル
  • 今持っている時間やリソース

といった「現在地」から出発し、「今できそうなこと」「思いついたこと」を順に積み上げていく考え方である。この思考は一見合理的に見えるが、構造的な欠陥を抱えている。

スタートドリブンの3つの限界

① 行動の良し悪しを判断できない

ゴールが定義されていないため、その行動が正しかったのか、遠回りだったのかを判断できない。結果として、「やったこと」だけが増え、改善の判断材料が残らない。

② 選択肢が現在地に縛られる

今できることから考えるため、本来であれば検討すべき選択肢が最初から除外される。これは「現実的である」ように見えて、実際には可能性を狭める思考である。

③ 行動が目的化する

動いている状態そのものが評価基準になり、「何のために動いているのか」が後回しになる。結果として、行動量は増えても成果に結びつかない。

『逆算思考』が提示するゴールドリブン思考

ゴールから考えるとはどういうことか

本書が対置するのが「ゴールドリブン思考」である。ゴールドリブンとは、

最終的に到達したい状態を先に定義し、そこから必要な要素・条件・行動を逆向きに考える思考法

ここで重要なのは、ゴールは願望ではなく「状態」で定義されなければならないという点だ。

ゴールは「判断可能な状態」である必要がある

『逆算思考』では、次のような表現が使われている。

ゴールとは、第三者が見て「達成したかどうか」を判断できるものでなければならない

  • 成長したい
  • 評価されたい
  • レベルアップしたい

といった表現はゴールにならない。一方で、

  • 〇〇の業務を単独で完結できる状態
  • 上司に対して成果を数値で説明できる状態
  • 特定の案件を主担当として回せる状態

といった表現であれば、逆算の起点として機能する。

逆算思考の本質は「行動を減らすこと」

なぜ逆算は行動を減らすのか

逆算という言葉は、「手順を細かく決めること」「計画を立てること」と誤解されがちである。しかし本書が一貫して伝えているのは、逆算とは行動を増やす技術ではなく、減らす技術であるという点だ。ゴールが明確になると、そのゴールに直接関係しない行動は、やらないという判断ができるようになる。

「とりあえず行動」が生まれる理由

ゴールが曖昧な状態では、行動の是非を判断する基準が存在しない。その結果、

  • 動いていない不安を消すために行動する
  • 思いついた改善を順番に試す
  • 他人の成功事例を模倣する

といった行動が増える。これらはすべて、ゴール不在が生む行動である。

ゴールから「必要条件」を洗い出すプロセス

条件出しの段階では現実性を考えない

『逆算思考』では、ゴールを設定した後に行うべきこととして、「必要条件の洗い出し」が挙げられている。ここで重要なのは、

今できるかどうかを考えない

という点である。ゴールから見て、本来必要な要素をすべて書き出す。現実的かどうかは、後で考えればよい。

具体例:プロジェクトを主導できる状態

ゴールを「プロジェクトを主導できる状態」と定義した場合、必要条件として次のような要素が挙がる。

  • 業務全体の構造理解
  • スケジュール管理能力
  • 関係者との調整力
  • 数字や進捗を説明する力

この時点では、「今の自分にできるかどうか」は考えない。

条件を「順序」に並べ替える意味

逆算が機能するのは順序を決めたとき

必要条件を列挙しただけでは、まだ逆算は完成していない。次に行うのが、条件を因果関係で並べ替えることである。

  • これがなければ次に進めない
  • これは後からでも間に合う

という視点で整理する。

優先順位が決まると迷いが減る

順序が決まると、

  • 今やるべきこと
  • 今はやらなくていいこと

が明確になる。逆算思考が苦手な人ほど、この整理をせずに、すべてを同時にやろうとしてしまう。

実務で使うための具体的アクションプラン

STEP
ゴールを「状態」で明文化する

ゴールは必ず「〇〇できている状態」という形で書き出す。曖昧な表現は使わない。

STEP
必要条件を網羅的に書き出す

ゴール達成に必要な要素を、質より量を優先して列挙する。この段階では削らない。

STEP
条件を因果関係で並べる

「これがなければ次に進めないか?」という問いで、順序を決める。

STEP
最初の一手を決める

最も手前にある条件が、今やるべき行動になる。この行動は小さく、検証可能であることが重要。

STEP
定期的にゴールから再逆算する

状況が変わったら、必ずゴールに立ち戻り、逆算をやり直す。

まとめ

『逆算思考』が示しているのは、早く動くための方法ではない。ゴールを起点に思考することで、不要な行動を削り、努力を積み上げるための思考法である。とりあえず行動してしまう状態から抜け出すためには、行動の前に、「どこへ向かうのか」を明確にする必要がある。

逆算とは、迷いを減らし、選択肢を意図的に広げるための基盤である。

リクルート・グループの様々な事業で成果を残した著者のもとには、 数多くの依頼が舞い込みます。内容は様々で、必ずしも得意だったり、 経験のあるテーマばかりではありません。 それでも課題を解決し、依頼者の要望に応えられるのは、 著者の考え方に秘密があります。

この記事を書いた人

ASLIFT編集長。20代で転職・学び直し・キャリア選択に迷い、努力しているのに成果につながらない違和感を抱いた経験から、行動が空回りする原因を構造的に考えるようになる。個人の成功談や精神論に頼らず、仕事・学び・生き方を横断して思考の前提や判断基準を整理。選択肢が多い時代において、自分なりの軸で決め、納得して進むための判断材料を一次情報ベースで発信している。

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